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[論考] ブロックチェーンゲームの本質。そしてアセットのゲームからの独立が創り出す未来

今日はちょっと難しい話をするよ。

今日は近所のネコの集会に参加する予定があるんだった!
じゃあな!

よし、クオン。
そいつを捕まえろ。

よしきた!

ギャーー!!!
何すんだ!
難しい話なんて聞きたくない!

お前は歯医者に連れてこられた子どもか!
たまには真面目な話にも付き合いなさい!

いやだーーー!!!
ファオのパワハラだーーー!!!

どこがパワハラだ!

「ブロックチェーンゲーム」ってそもそもなに?

コロネが暴れ疲れたところでようやく本題に入るよ。
今日話したいのは「ブロックチェーンゲームの本質」についてだ。

ブロックチェーンゲームの本質?

うん。
従来のゲームとブロックチェーンゲームは何が根本的に違うかってことさ。
そして、その違いによってブロックチェーンゲームは将来どうなっていくかという話をしたいと思ってる。

その本題に入る前に、まず「ブロックチェーンゲームとは何か」ということを定義しておくよ。
  • ブロックチェーンゲームの定義 = アイテム(アセット)の所有権がブロックチェーンによって管理されているゲーム

ゲーム内で使えるアイテムの所有権情報がブロックチェーンに刻まれて、所有者が自由に譲渡したり売却したりできるゲームのことを「ブロックチェーンゲーム」と呼ぶよ。

マイクリとかクリスペは……。

当然ブロックチェーンゲームだね。

ブロックチェーンゲームと従来のゲームは何が根本的に違うのか

MMO RPGでユーザーが自由にアイテム取引できるゲームってあるじゃん?

うん。
MMO RPG以外にもそういうゲームはたくさんあるよ。

ブロックチェーンゲームでもこれまでのゲームでも自由にアイテムの取引ができるんだからあまり変わらなくない?
なんかむしろブロックチェーンを使う分だけかえってめんどくさくなったっていうか。

ユーザーの目に触れる表面的な事象としてはたしかにあまり違いがないように見えるね。
でも、実はここにはゲームとしての根本的な質の転換が隠されているんだ。

ゲームが運営終了しちゃうとするでしょ?
これまでのゲームだと、そのゲームで持ってたアイテムはどうなる?

なくなっちゃうな!
全部パーだ!

ブロックチェーンゲームだと?

ゲームがなくなってもアイテムの所有権を示すトークンは残るな。

アホか!
遊べるゲームがなかったらトークンだけ持っててもしょうがないじゃん!

実態としてはね。
でも、ゲームがなくなってもアイテムのトークンは残るというのはとても重要なことなのさ。

えー、納得できなーい。

今は納得できなくてもいいから説明を続けるよ。
あ、この後はゲームのアイテムのことを全部「アセット」と呼ぶことにするからね。

ゲームがなくなってもアイテムは残るということは、ゲームとアセットはまったく別の存在だということだよね。

それはそうだな。
従来のゲームでは、ゲームがなくなってアイテムだけが残るということは考えられない。

つまり、これまでのゲームは「ゲームあってのアセット」ということだね。
ゲームが主、アセットが従。その関係性は絶対。
ゲームがなくなればアセットも消滅する。

一方ブロックチェーンゲームは、ゲームとアセットがまったく別個に存在しうる。
アセットがゲームから独立していて、その所有権はユーザーが持っているので、ゲームがなくなってもアセットはユーザーのもとに残る。

価値ないけどな!

「アセットを使うゲームがなかったら価値ないじゃん」というのはその通りで、ゲームがアセットに価値を与えているという関係にあるんだね。
じゃあ、なんでブロックチェーンゲームのアセットには価値があるのかということを、もう少しくわしく分析してみよう。
この段落のまとめ
  • ブロックチェーンゲームではアセットがゲームから独立した存在になっている
  • ゲームがなくなってもアセットは存在し続ける

ブロックチェーンゲームにおいてアセットの価値を決めるもの

じゃあ、コロネに質問。
ブロックチェーンゲームのアセットはなんで価値があるの?

そりゃゲームで使えるから!
強いアセットがあればゲームで無双できる!
だから価値がある!

間違ってはいないけど、答えとしては不十分だね。

えー。

さっそく答え出しちゃうけど、ブロックチェーンゲームのアセットの価値を決める要素をピックアップするとこんな感じになるよ。
  • アセットの価値 =
    + ①利用可能なゲームの楽しさ
    + ②希少性、唯一性
    + ③流動性(取引可能性)
    + ④物語(メタ情報)

「①利用可能なゲームの楽しさ」がコロネの言ってることだね。
アセットを使えるゲームが楽しかったら、アセットの価値も上がる。

合ってるじゃん!

合ってはいるんだけどさ。
アセットに価値を与えるゲームは1つだけ?

1つとは限らないな。
この前のマイクリとクリスペのコラボでは、マイクリのヒーローがクリスペのカードとして使えるようになって、市場での価格が上がったな。

そうだね。
ブロックチェーンゲームのアセットに価値を与えてくれるゲームは1つだけじゃなくて、いくつも存在しうるということだね。

えーでも、アセット全部じゃないじゃん。
ごく限られた一部のヒーローとカードだけだよね?

そういう取り組みが始まったばかりだからね。
これから生まれてくるブロックチェーンゲームの中には完全なアセットの相互流通を実現したゲームが出てくるかもしれないよ。

現に、マイクリの後継タイトルになるマイクリSではマイクリのヒーローとランドが使えるようになるって公表されてるでしょ?

なるほどなー。
アセットに価値を与えるゲームは1つだけじゃないというのはわかったよ。

アセットに価値を与えるゲームが1つじゃないということは、アセットに価値を与える他のゲームが存在すればアセットの価値は維持され、上昇しうるってことだ。
そのアセットを生み出したゲームは消滅しても、残されたアセットが価値を持ち続けるということがありうる。

それは確かに従来のゲームではありえないことだな。

これはブロックチェーンゲームとアセットがそれぞれ独立した存在だから可能になることだよね。
「アセットの所有権がブロックチェーンで管理される」っていうのは非常に重要なことだよ。
ここには従来のゲームとブロックチェーンゲームの根本的な質の転換があるんだ。

従来のゲームはゲームがあってのアセット。ゲームが「主」で、アセットが「従」だ。
一方ブロックチェーンゲームはアセットあってのゲーム。アセットが「主」で、ゲームが「従」だ。
アセットはいろんなゲームで使えるようになるからね。

さて、アセットに価値を与えるものの分析に戻るよ。
「②希少性、唯一性」については詳しく説明しないよ。
数の限られているものほど価値があるってのはわかりやすいでしょ?

それはわかる!

「③流動性(取引可能性)」はちょっと難しいけど、取引できないものには値段がつけられないってことだ。
取引できるものであるから相場も決まるし、価値も出る。
これも詳しくは説明しないよ。

まあ、これもなんとなくわかる!

で、重要なのが「④物語(メタ情報)」だ。
これはこの後詳しく説明するよ。

物語とはすてきな表現だな。

ちょっとキザだけどね。
まあでも、ブロックチェーンゲームのアセットに価値を与えるのはまさに「物語」だ。
この段落のまとめ
  • ブロックチェーンゲームではアセットが主、ゲームが従
  • アセットに価値を与えるゲームは1つだけでなくいくつも存在しうる

アセットの「物語」とは?

「物語」ってのは要するにアセットに刻まれた「メタ情報」のことだ。

メタ情報?

あるアセットについての付加的な情報のことだね。
例えば、コロネが持ってるクリスペのカードには「名前」「発行日時」「画像」「カードのパラメータ・効果」「フレーバーテキスト」「経験値」なんて情報が付加されてる。

あーたしかになー。
普段気にしてなかったけど、カードにはいろいろ情報がついてるな。

こういった情報があるからそのアセットがゲームの中でカードとして使えるんだね。
ゲームの中で意味をなす強いメタ情報がついていればそれだけアセットの価値が高くなるよね?

なるほどな!

でもメタ情報がもたらす価値はそれだけじゃない。
それだけでは「物語」にはならない。

どういうこと?

メタ情報にはもっといろんな形があって、そこに物語が生まれるってことさ。

さっぱりわからん!

具体例をあげるよ。
例えばすっごく人気なアイドルが持ってるブロックチェーンゲームのアセットがあるとするでしょ。
それを譲ってもらえるならすごくいい値段がつくと思わない?

アイドルには興味ないけど、大谷翔平とか錦織圭が持ってたアセットとかならすごく価値がある気がするな!

それが「物語」だよ。
「有名な人が持っていた」という記録はブロックチェーンに刻まれて誰からも確認できる状態になる。
アセットの所有者という記録もアセットの価値になりうるんだね。

オレが持ってたアセットも将来めっちゃ価値がつくようになるってことだな!

かえってマイナスにならなければいいがな……。

ならねーよ!

「物語」というのはそれだけじゃない。
アセットのメタ情報にはもっといろいろなものを刻むことができる。

例えば、マイクリで「デュエルカップで優勝した時に使ったヒーロー」とか「フラッグ戦に出場した時に使ったエクステンション」とかそういう記録だね。
そういう記録がアセットにどんどん刻まれていくと、まさにそこに「物語」が生まれる。

それはすごくロマンチックだな!

「あの勇者が使った伝説の武器」とかができるな!

「だれが持っていた」「どのゲームで使った」「このアセットを使ってこんなことが起きた」といったメタ情報の蓄積がアセットに価値を与えるんだね。

なので、「アセットにいかに物語を与えるか」ってことが、そのブロックチェーンゲームの繁栄にすごく大きな影響を与えるようになっていくと思うよ。
この段落のまとめ
  • アセットのメタ情報は「物語」になる
  • ゲームがアセットに「物語」を刻むことでアセットの価値は上がっていく

ブロックチェーンゲームの未来はどうなっていく?

ブロックチェーンゲームにおけるアセットの本質とそれに価値を与えるものについて理解してもらったところで、そうなると「ブロックチェーンゲームの未来はどうなっていくか」ということを考えたいと思う。

未来かー。
どうなるんだろうなー。

おそらくそうなるというところでは、「アセット発行の非中央集権化」というのが進んでいくと思う!

アセット発行の非中央集権化!?
意味わかんねー!

今から説明するよ!

今のブロックチェーンゲームはそのゲームで使うアセットの発行は運営者が基本的に自由にできるでしょ?

どのゲームもそうだな。
自主的に一定のルールを設けていることが多いようだが。

それがいずれゲーム運営者の手から離れて完全にユーザーの手に委ねられるようになる。

ゲームの運営者にとってはアセットの発行権は非常に大切なものだと思うが、手放すかな?

手放したくないだろうけど、自然の流れとしてそうなるということさ。
ブロックチェーンゲームが誕生して、ユーザーによるアセットの所有権が確立し、ユーザーのアセットの権利に対しての意識が高まってきている。
その先には「アセットの発行権もユーザーに委ねるべき」という要求が高まっていくことが予想できる。

あー、界隈の雰囲気的にそんな感じになりそうなのはわかる。

率先して非中央集権的、民主的なアセット発行の仕組みを開発したゲームが市場を制覇することになる。
そうなると、他のゲーム運営者も必然的に追随せざるを得なくなるというわけだね。

でもさ、実際にアセットの発行権をユーザーに渡すなんてこと、できるかな?

どうやるかは私もわからないけど、できるでしょ。
ビットコインがいい例だよ。

ふむ。
たしかにビットコインは通貨の発行を非中央集権化、民主化したものだな。

アセット発行権の非中央集権化を支持するユーザーがたくさんいればそうなるんだよ。
それが何年先になるかはわからないけど、ブロックチェーンゲームの文化的背景や理念を考えると、将来的にそうなっていく可能性は高い。

そういう民主的なロジックのもとに発行されたアセットは信頼がおけるものとして人気が出るから、いろんなゲームがそれを受け入れるようになる。
そうなるとユーザーはますますそういうアセットを欲しがるようになるというわけさ。

ゲーム側としても、人気のあるアセットを受け入れれば新しいユーザーを獲得できるということだし、そのアセットの価値をゲームの価値の一部にすることができる。
ユーザーにとってもゲームにとってもメリットがある。

でもさ、ユーザーはそれでいいんだろうけどさ、アセットの発行ができなくなったらゲームを作る側が儲からなくなるじゃん。
そうなるとゲームが作れなくなるよ?

いい指摘だね!
アセット発行が非中央集権化することによって、ゲーム運営者側のビジネスモデルも必然的に変化していくということなんだよ!
それをこの記事の最後に説明しよう。
この段落のまとめ
  • ゲームアセット発行の非中央集権化が進んでいくのは必然的な流れ
  • 非中央集権的に発行されたアセットを受け入れることでゲームもその価値の一部を手に入れることができる

ゲーム運営者側のビジネスモデルはどう変化する?

アセットの発行権がユーザー側に移っても、ゲーム運営者は以下のような方法で収益化ができると考えるよ。
  1. ゲームの利用料: ゲームセンターのコインのようなプレイ料金の都度支払い
  2. サブスクリプション: いわゆる月額課金制。最有力の収益化方法
  3. 一部のアセット発行益: そのゲーム専用のアセットの発行と販売による収益
  4. 取引手数料: ゲーム内でアセットの取引が発生した場合の手数料を徴収
  5. マイニング益: ゲーム運営者自体がアセットのマイニングを行って収益化する
  6. アセット用スキンの販売:アセットにそのゲームにおける外観やメタ情報を付加するための料金を徴収/li>

項目が多いのでそれぞれは解説しないけど、ゲーム運営者が収益を得る方法はこんなふうにいろいろ考えられる。

どれもそんなにガツンと儲かる感じはしないよなー。

そうだね。
収益化の方法はあるといっても、スマホゲームのように無料プレイでたくさんのユーザーを集めて、ガチャ課金やアイテム販売で一気に大きな収益を得るというわけにはいかない。

それじゃすげー大作ゲームとか無理じゃない?

ブロックチェーンゲームで大作を提供するには新しい収益化の方法を発明する必要があるだろうね。
もっとも、ブロックチェーンゲームが将来メジャーになっても、従来のゲームがなくなるわけじゃないよ。
すごい大作はコンソール機とかスマホでリリースされてこれまで通り遊べるはずだ。

部分的にアセットの管理にブロックチェーンを取り入れるゲームもあるだろうし、ゲームがブロックチェーンをどういう形で利用するかはまだ予想できない部分がたくさんあるね。

うーん……。
ブロックチェーンゲームを作りたがる会社って増えるのかなあ?

大作を作りたい大きな事業者にとってはブロックチェーンゲームはあまり魅力が感じられないかもしれないけど、小規模な事業者や個人のゲーム開発者にとってはすばらしい環境になりうるよ。

なんで?

自分たちでアセットを作らなくても、すでに流通してるアセットを受け入れるゲームを提供すればユーザーを獲得できる可能性があるからね。
スマホのゲームみたいにガチャ用にたくさんキャラクターやアイテムを用意しなくてすむのは大きいよ。
人集めのマーケティングと大量の素材作成という一番お金がかかる部分を省略してゲームのメイン部分の開発に注力できるのは大きなメリットだ。

それはたしかにありそうだな!

DecentralandThe Sandboxといったブロックチェーンゲーム向けのプラットフォームサービスでは、ユーザーが自由に世界の中に自分が開発したゲームを設置できる仕組みを提供しようとしてる。
そういった環境もこれから整備されてくるから、小規模事業者や個人ゲーム開発者の活躍できるチャンスはこれからさらに広がっていくはずだよ。
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たくさんの開発者がゲームを提供できるようになればアセットを利用する機会もどんどん増えていくな。

おもしろいゲームが増えていけばプレイするユーザーも増えていくな!

そうやってマーケットが広がっていけば資本力のある大手のゲーム会社もなんらかの形で参入してくるだろうしね。
この段落のまとめ
  • ブロックチェーンゲームで大作を提供するのは難しいが、収益化の方法はたくさんある
  • 小規模事業者や個人開発者にとってゲームを提供しやすくなる環境が整えられつつある

まとめ

というわけで、この記事ではブロックチェーンゲームと従来のゲームの本質を比較し、そこから生まれてくる変化についてまとめてみたよ。

ポイントとしては、ブロックチェーンゲームではアセットがゲームから独立した存在であるため、ゲームがなくなってもアセットは残り価値を持ちうるということだな。

あと、アセットについたメタ情報は「物語」で、ゲームがアセットに「物語」を刻むことでアセットの価値は上がっていく!

そして、ゲームアセット発行の非中央集権化が進んでいくのは必然的な流れということだね。

アセット発行の非中央集権化とそのようなアセットが本格的に流通するようになるのはどれくらい時間がかかるかまだわからないけども、ブロックチェーンゲームは確実にその方向に向かっている。

ブロックチェーンゲームが誕生しておきた変化が先に進んでいくと必ずそうなるということだな。

なかなか壮大な話だな!
ほんとにそうなって、どんなアセットとゲームが生まれてくるか楽しみだな!